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あなたの隣の免疫不全系男子

ありがとう

友人が、この世の生を閉じた。

 

友人と言っても、陽性者のミーティングで何度か顔を合わせただけの仲だ。

 

何度か顔を合わせただけと言っても、感染がわかった直後の、いちばん深い暗闇の中で出会った仲だ。

 

忘れられない仲だ。

 

同じ衝撃に打たれ、同じ傷を負った人たち。告知の直後に出会えたことで、僕らはお互い、どれだけ救われただろう。

 

心の奥に渦まく、言葉にならない言葉を何とか絞り出し、一つずつ場に出し合う。そんな時間を過ごすうち、僕らは笑顔の仲間になった。

 

ミーティングは数回で終わったけれど、僕らはLINEグループを作って会話を続けた。後日、みんなで集まって飲みにも行った。でも、二回目の飲み会は彼が欠席した。その次の飲み会は、僕が欠席した。

 

何もなければ交わることがなかった、いくつかの線。HIVによって偶然に交わった線は、次に交わる日をを確約することなく散って行く。

 

そして、ひと月も遅れて。

 

僕らと彼、病気と社会、僕らと病気の間の距離を表わすかのような分厚い時間を間にはさんで、僕たちはその線がもう同じように交わらなくなったことを知った。

 

HIVによって。

 

HIVと死が現実で結びつくなんて、昔話だと思ってた。

 

2018年において、統計的にはごく稀。きわめて僅か。でも、例えどんなに僅かでも、その僅かに属する一人が僕の隣にいるなら、それは稀じゃない。すべてだ。

 

初めて会った日、障害者になることを嫌がる僕らに、「もっと辛い日々を過ごす障害者の人たちを思うと、障害者を名乗ることが申し訳ない」と言った彼。

 

年明け、自身の幸せばかり祈ってきた僕らに「みんなの健康を祈ってきたよ」と言った彼。

 

腹立たしい。

 

いまこの病気が、無性に腹立たしい。

 

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数えるほどしか交わさなかった、彼との一対一のLINE。ブログとかやらないの?と聞いたら、表現するのは苦手だと言って、こう続けた。

 

「人にも自分にも批判的になっちゃうんですよね。」

 

僕は。

 

僕はいつも君の前で、自分の小ささが恥ずかしかった。

 

ブログを書こう。そして、自分を責めるまい。他人を責めるまい。僕にできる数少ない君への恩返しは、きっとそんな姿を見てもらうこと。

 

君に出会えて、ありがとう。

 

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