HIROTOPHY / 会社員ヒロトの免疫低めブログ

東京在住の会社員ヒロトのブログです。

そこは思いがけず世界が深まるバー

あまりお酒を飲まない僕ではありますが、行きつけの飲み屋さんは数件あったりします。そのひとつが「バブリングバー」というお店です。東京・新宿ゴールデン街の「からーず」さんを借りて、日曜日だけ営業しているバーです。

 

npobr.net 

ゴールデン街という「濃ゆい立地」にもかかわらず、白壁に白いカウンターを配置した、明るく柔らかな雰囲気の店内。ゴールデン街の場末感を楽しみたいあなたには物足りないかもしれませんが、ゴールデン街が初めての人や軽く一杯飲みたい人にはイイカンジだと思います。

 

運営しているのは、僕のインタビューを掲載してくれたNPO法人バブリング。「大切な人へのカミングアウトを応援する」という理念を掲げて活動する団体で、最近テレビやラジオで紹介されたので知っている人もいるかもしれません。

 

カミングアウトと言っても、指向性別や性自認(いわゆるLGBT)だけを切り口にしているわけではありません。

 

出自、疾患、経歴、障害…。「本人が言わなければ周りに気付かれないマイノリティ要素」は、いろいろあります。大部分の人に些細なことでも、その人にとっては死んでも隠し通したい、そんなマイノリティ要素だってあるでしょう。

 

バブリングでは、その種類を問わず、見えない少数派であることが「なぜ生きづらさをもたらすのか」「大切な人に伝える(又は伝えない)ことは双方にどんな意味を持つのか」をテーマにしていて、あくまで「横軸」のコンセプトを貫いています。

 

最初に僕が興味を持ったのも、そこでした。

 

特定の属性にこだわる縦軸アプローチでは、どうしても結集した人の「当事者意識」が増幅されて、「我々が特別だと認めてほしい」という主張が必要以上に強まりがちです。でも、いろんなマイノリティ属性に共通の問題点を探ろうとする横軸アプローチでは、「誰もが当事者」というフレームワークで社会を見つめることになり、むしろ「僕たちが特別じゃないことを理解してほしい」という主張になります。

 

ある日いきなり予想だにしなかったマイノリティ要素を持つことになった僕が強い違和感を感じた、一部の当事者のキツメの当事者意識。その戸惑いを解決するヒントがありそうな場所。それがバブリングであり、バブリングバーだったのです。

 

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もっとも、カミングアウトがテーマです!とここまではっきり言われてしまうと、正直不安もありました。バーに行ったら「HIV持っていることカミングアウトしろ!」って説教されたらどうしよう...と本気で心配しました。

 

そんな心配をめぐらせながらもバブリングバーの扉を叩いたのは、僕の場合なかばヤケクソだったのかもしれません。当時の僕は、HIV陽性がわかった直後でした。元彼へのカミングアウトという重く大きな宿題を抱え、何もできずに立ち尽くしていました(詳しくはWEBで)。とにかく「いま」を壊したい。壊すことで、そこから活路が見いだせるかもしれない。そんな思いで、僕は覚悟を決めてお店の階段をのぼったのです。

 

もちろん、こんな悲壮な覚悟でバーに行ったのは最初だけで、今では気楽に立ち寄らせてもらっています。バブリングバーの名誉のために付け加えておくと、カミングアウトを強要されることなど、実際にはまったくありませんでした(よく考えれば、そんなことをしているはずもないのですが…)。

 

もう一つ伝えたいのは、このバーの多様性を受け止める空気感です。

 

結果的に僕はHIVを持っているとスタッフさんに伝えたのですが、それでお店の人たちとの関係が変わったということは何もありませんでした。世の中にはいろんな人がいて、ここのお客さんにもいろんな人がいて、中にはHIVを持った人もいる…。その程度の話になって、いまに至っています。

 

そう、いま僕がバブリングバーを好きな理由は、ここにあります。

 

スタッフさんもお客さんも、いろんな人がここには集まっています。異性愛者と同性愛者の間に垣根がないのはもちろん、さまざまな多数と少数がここでは自然に共存しています。

 

実のところ、「事実」に目を向けるなら、バーに足を運ぶまでもなく僕らはすでにいろんな人と共に生活しています。ただ、普段の暮らしの中で、多くの人は「少数派に属する側面」を開示しないので、周りの人も「いろんな人と共に暮らしている」という実感を得る機会がなく、結果的に「少数派なんてそうめったにいない」という認識にたどりつきがちです。

 

しかし、このバブリングバーは、意図されたものか結果としてそうなったのかはわかりませんが、日ごろあまり開示しない自分のマイナーな一面を「言わなくてもいいし、言っても大丈夫」という独特の空気感を持っています。

 

僕は、この空気感をとても居心地よく感じています。

 

僕自身が、HIVのことを隣の人に伝えることもあれば、伝えないこともあります。逆に、何かを抱えているとは思いもしなかった「普通に見える」隣の人から「私はレズビアンなんですけど」「摂食障害でして」「何万人に一人の疾患を持っているんです」などと伝えられることもあります。もちろん、他愛のない世間話だけを楽しくして終わることだってたくさんあります。

 

そのつど、白いカウンターに肘をつきながら、あらためて思うのです。

 

一見自分と同じような人が、あらゆる側面で自分と同じはずもないということ。自分にとって当然であることが、全ての人にとって当然ではないこと。自分は、まだまだ見かけでいろんなことを勝手に判断していて、いろんな偏見を無自覚に持ち合わせていること。マイノリティ要素を開示しても排除されないコミュニティは実現ができて、それはとても居心地がいいこと。

 

そして、少数派としての自分が周りに受け入れてもらえるはずもないと考えていること自体が、僕の偏見なんだろうということ。

 

いろんなが人がいていいんだよな。

 

今日は日曜日。

 

あなたが東京・新宿に行くなら、ゴールデン街の一角の白いバーをちょっとのぞいてみてください。運が良ければ、ヒロトがそこでコーヒーを飲んでいるかもしれません。←お酒弱い